あらすじ
終戦から七十五年、杉原麻衣は出版社の編集を経て作家となった。戦争をテーマに雑誌を作るという鞠書房の企画に参加することになった麻衣は、世界的に有名な指揮者・栄居紀彰〈さかい としあき〉の自伝を代筆する事になる。
祖父・雪杜の親友である紀彰の、若き日に出会った最愛の人、聾唖の少女・棟方澄花。
一生をかけて愛してゆける人との出会いは、長い間恋愛を避けてきた紀彰の心を変えてゆく。
『一緒に、ウイーンに行かないか』
昭和二十年八月一日、紀彰はプロポーズの返事を聞くために、待ち合わせ場所の向日葵畑に向うが。
あと一週間、早く終わっていれば―――。紀彰の泣き叫ぶ声が、向日葵畑に響いた。