あらすじ
光に満ちた宗教国家。
祝祭は絶えず、夜は訪れないと信じられている国で、1人の少女は地下に生きている。
彼女が暮らすのは、地上から切り離された聖域。
そこでは毎日、祈りが捧げられ、儀式が行われる。
少女はその中心にいながら、自分が何者なのかを知らない。
名前も、過去も、世界の姿さえも。
ただ、彼女が“必要とされている”ことだけはわかっていた。
一方、地上では光を象徴する皇太子が、
国と信仰の未来を背負い、理想を語っている。
彼はまだ知らない。
この国の光が、どこから生まれているのかを。
偶然の出会いをきっかけに、
地下と地上、闇と光、祈りと真実が少しずつ交差していく。
少女は外の世界に触れ、
皇太子は“知らなくてよかったもの”を見つけ始める。
やがて、信仰の正しさは揺らぎ、
救済という言葉の意味が問い直される。
この物語は、
「誰かの犠牲によって成り立つ世界は、救われていると言えるのか」
という問いを、静かに、しかし執拗に突きつける。
闇は、悪ではない。
光も、必ずしも正義ではない。
ただ、人が選び続けた結果が、そこにあるだけだ。
『黒燐の女王』は、
1人の少女と、1つの国が、
それぞれの“正しさ”を失っていく物語である。