あらすじ
県立・並木坂高校。
野球部はあるが、強くも弱くもない、どこにでもあるチーム。
その学校に、「幻のエース」と呼ばれる投手がいる。
主人公・雨宮 恒一(あまみや こういち)は、
肩も肘も異常なし、球速も制球も一級品。
――なのに、試合の日になるとマウンドに立てない。
理由はケガじゃない。
心が、完全に折れているから。
中学時代、たった一度の大炎上。
その日から、雨宮は「投げられるのに、投げられない」存在になった。
教室にも行けず、彼の居場所はいつも保健室。
ベッドの上で天井を見ながら、
僕は今日も「もしも」を考えている。
そんな彼の球を偶然見てしまったのが、
世話焼きな保健室の先生と、野球バカの投手。
「こんな球、埋もれさせたらあかんやろ」
少しずつ、本当に少しずつ。
キャッチボール一球分だけ、前に進む雨宮。
マウンドは遠い。観客の視線は怖い。
それでも――
「投げない理由は山ほどある。
でも、投げたい理由は、まだ消えてない。」
これは、
勝利より先に、教室を目指すエースの物語。