あらすじ
太陽神を信仰する王国アウレリア。
聖女と称えられる第一王女ローザリアと、その双子の妹で多属性魔法を操る第二王女リリシアン、そして神官として育てられた第三王女エルシア。
三姉妹は、それぞれ王族としての役目を背負いながら、勇者アレクシオン率いる魔王討伐隊として旅立つ。
だが道中、魔王の親衛である“番犬”ガルディオとの戦いに敗れ、ローザリアは魔王城へ攫われてしまう。
絶望の中で討伐隊は進み続けるが、リリシアンはやがて「姉は生きている」と確信する。
一方でアレクシオンの目的は、世界の救済からローザリア個人の救出へと静かに歪み始めていく。
魔王城で囚われたローザリアは、魔族を滅ぼすはずの聖魔法で、名もなき負傷兵を癒す。
その行為は噂となり、やがて魔族たちの間で“太陽”として受け入れられていく。
魔王ヴェルゼリオはそのすべてを見つめ、止めることも裁くこともしなかった。
沈黙の中で、二人はゆっくりと互いの孤独と傷を理解していく。
やがて勇者一行は魔王城へ辿り着き、ヴェルゼリオは自らの死がローザリアと世界を守ると悟り、勇者に討たれる道を選ぶ。
勝利と引き換えに戻ったローザリアは、王国の命によってアレクシオンと結婚し、同時に王位を継がせる。
しかし初夜、ローザリアは自身が魔王の子を身ごもっていることを告げる。
それを“穢れ”と受け取ったアレクシオンは狂気に堕ち、腹の子を殺すことで浄化できると信じ込む。
逃げ込んだ先で、ローザリアはリリシアンにすべてを打ち明ける。
世界と姉、どちらも守るために、リリシアンは禁じられた古代魔術――封印を選ぶ。
ローザリアは封じられ、歴史から消える。
駆けつけたアレクシオンはその真実を知らぬまま、リリシアンを「姉を殺した反逆の魔女」と糾弾する。
千年後。
不老の呪いを受けたリリシアンは、月影の魔女として生き続けていた。
封印の奥で眠る姉と、まだ見ぬ未来を信じながら――。
これは、
救いたいと願った者たちが、
それぞれ異なる「正しさ」を選び、
世界を、そして互いを傷つけてしまった物語。
そして、
月と太陽が再び交わる日を待つ、
静かで残酷な、祈りの物語である。