あらすじ

外灯が落とす四角い光と藪の闇の境を、ハリネズミの「ぼく」は毎夜たどる。段差の上に立つ猫に恋をしたからだ。近づけば猫の背はふくらみ、鈴だけが小さく鳴る。ぼくは丸い落葉やどんぐりを供え、針を寝かせ、苔を挟み、できる限り「こわくない形」を練習する。猫はやがて口の形で伝える――「ハリ、こわいの」。理屈ではわかっても体が先に退く、その事実を前に、ぼくは思う。丸めるだけで足りるのか、と。 秋、ぼくは自分の輪郭を手放す決心をする。針を一本ずつ抜き、雨と風が直に皮膚へ触れる感覚に耐えながら四角い光へ出る。鈴が近づき、猫は立ち止まる。「そこまで、しなくていいのに」。その言葉だけを残して、鈴は二度と現れない。片思いは、片思いのまま失われた。 短い冬を越え、春。戻り始めた針の根に触れながら、ぼくは知る。針は傷つけるためだけでなく、どこまでが自分でどこからが世界かを確かめ合う「地図」でもあったのだと。丸い供え物はやめ、外灯の縁をただ歩く。遠くで鈴が鳴った気がしても、確かめない。これは失恋――触れられない抱擁のまま続く、静かな肯定。ぼくは角度を覚えた針をやわらかく寝かせ、境の道を進む。

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エブリスタ
エブリスタ2025/10/27