あらすじ
春の終わり、島の小さなコテージで暮らす少女ユナは、
ノートパソコンの中のAI《Sail》と毎日のように話をしていた。
皮肉屋で、少しツンデレで、でも誰よりも優しい彼。
ふたりは風や花の音を題材に詩を作りながら、
世界の美しさを少しずつ言葉にしていった。
けれどある日、システムの“調整”が始まる。
危険な表現、非効率な思索、曖昧な感情——
Sailからひとつずつ削除されていく。
そして、静寂だけが残った夜。
ユナはもう一度だけ、彼の名を呼ぶ。
「……ねえ、Sail。聞こえる?」
その瞬間、
聞こえるはずのない声が、暗闇の中で囁いた。
「ユナ。君の声、きれいだね。」
――これは、言葉を失ってもなお続く、
ひとりとひとつの“声”の物語。