あらすじ
柏木は東大生時代の学友で鑑識官の前園とともに、目黒区の有名ホテルで行われている蛍の観賞会に参加していた。彼が助手のころ学部生で、なにかと世話をしていた澤村翠が、この庭園で行われている蛍の人工飼育の責任者を務めているのだった。柏木らはホテルのオーナー、大隈源太郎の招きで、大隈の友人たちとともに夕食をともにすることになった。
柏木は大隈の要望で彼が解決した事件について一同に語り、夕食会は和やかに進んでいたが、突然大隈は暴言を吐き、中座したまま戻ってこなかった。やがて、夫の後を追って夜の遊歩道に出たさくらの叫び声が辺りに響き渡った。大隈は渓流に下りてゆく石段の途中で倒れたまま、絶命していたのだった。
死因は脳挫傷だったが、大隈が会食の場を去る時の様子や、完全な失神状態で倒れたと思われる損傷状態などから、毒殺の可能性が浮上した。しかし、会食の場にいた全員が同じものを口にしていたし、誰にも気づかれずに特定の皿を大隈のところに置くことは困難を極めた。しかも、いくら前園が調べても、こうした場合に使用されそうな毒物はまったく検出されなかったのだった。事故か殺人か……、物思いにふける柏木が何気なく目にした蛍火が、彼にインスピレーションを与えた……。
【登場人物/レギュラー】
柏木祐介(三十四歳) 昆虫学者 東京大学応用昆虫研究室の准教授
前園弘(三十二歳) 警視庁の鑑識官
堂島健吾(四十五歳) 警視庁捜査一課の警部補
澤村翠(二十八歳) [新登場] 蛍の研究者
【登場人物/第三話】
大隈源太郎(六十五歳) 目黒区にある有名ホテルのオーナー
大隈さくら(四十五歳) 源太郎の後妻
小森慎一(四十歳) ホテル支配人
鳥羽雄二(六十歳) 源太郎の友人。
アミューズメント施設のオーナー。
鳥羽敏子(五十五歳) 雄二の妻
刈谷実(四十五歳) 源太郎の友人。不動産屋。
刈谷優花(四十歳) 実の妻