あらすじ

あの傘は、たしかに仕舞ったはずだった。 何年も前、恋人と別れた日の駅に置かれていたその傘を、わたしは拾い、二度と使わないと決めて、玄関の奥にそっと仕舞い込んだ。 なのにある日、職場の傘立てに――まるで誰かの手によって――“あの傘”が置かれていた。 それ以来、雨のたびに、わたしの傘は“あの子の傘”とすり替わるようになり、わたしの大切なものがひとつ、またひとつと消えていった。鍵。思い出。顔。名前。そして、わたし自身。 傘は確かに、誰かの手で置かれていた。 そして、わたしは静かに、“傘”になっていった。

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カクヨム
カクヨム2025/07/24
  • 現在の作品雨のあとに、誰もいない