あらすじ
「マリア。私は、君との婚約を破棄しようと思う。承諾してくれるだろうか?」
テオドール伯爵家の令嬢である私は、イシュトヴァーン公爵家のグラディスから婚約破棄を通告された。
私の目の前に、婚約を確かなものとしていた血の契約書が置かれ、事実上、その撤回を要求される。
「……分かりました。承諾いたします」
私はグラディスの圧力に負け、彼との婚約破棄に同意した。
しかし、私には婚約破棄された心当たりがあった──。
自由に動かない両足だ。貴族学園で悲劇的な事故に遭い、私の両足はただの飾りと化していた。
公爵夫人としての仕事をまっとうにこなせない私など、不要というわけだ。
そして、私は事故に遭ってから、婚約者だけではなく友人達も失った。
……いや、仮初めの友人達が、私の下を去っていった。
「私にはもう、誰もいなくなっちゃったなぁ……」
「……マリア様。そんなことを言わないで下さい。まだ私がいます」
私の呟きに侍女のエルザが目から涙を溢れさせる。
ついには、大粒の涙を流して、子供のように泣き出してしまった。
私は、そんなエルザを見て、軽く微笑みながら優しく語り掛けた。
「エルザ。そんなに泣かないで。実は私、スッキリしてるんだよ」
「……マリア様?」
「私はもう自由なの。これからは、『公爵夫人になるのに』と咎められることもないのよ?」
私は真っ青な大空に右手をグッと伸ばすと、雲をつかみ取るように手の平を握りしめる。
「私の前には、希望に満ちた無限の未来が広がってるのよ! 私は諦めない! 私はこれから、エルザと一緒にたくさんの幸せを手に入れるんだ!」
これは、全てを失った伯爵令嬢が、持ち前の明るい性格を生かして、より良い未来を求める物語です──。
※「小説家になろう」でも掲載しています。