あらすじ
『大叔父さん。ナノロボットは何?説明してね』
『その前に、祖母ちゃんと祖父ちゃんが、ヤッちゃんの実の母と父である事を説明せねばならぬ。ヤッちゃんは、その事を知っておったか?』
大叔父さんはいきなり、核心を突いてきた・・・。あたしはそう思った。
『ああ、知ってるよ。祖母ちゃんと祖父ちゃんは科学者で、自分の歳を忘れてた。そいで、四十をはるかに越えてから、二度目のラブラブになって、あたしが生まれた。
だけど、育ててる時間が無くて、二十歳以上離れた実の姉の母にあたしを育てさせた。
祖母ちゃんと祖父ちゃんは、高分子物性学と電子工学で人工知能を・・・』
そこまで話してあたしはハッとした。ハットじゃねえぞ。驚いた、たまげた。
『なんだ!たまげたは、「玉あげた」じゃなくって、「魂消た」って書くんか?初めて気づいたぞ。魂が消えるほど、驚いたって事だな。うん、まさにそれ以上の驚きだぞ!』
あたしは自己意識領域に浮んだ記憶を確認していた。
『バカ言ってねえで、先を説明しろさ!』
ヒロシがあたしをせっついた。
あたしは自己意識領域に浮んだ記憶から、幼い頃に祖父ちゃんが話した事、実の母と父が何をしていたか説明した。
『簡単に言うと、祖母ちゃんと祖父ちゃんは、電動有機高分子で、人工知能のナノロボットを開発したんだ。神経細胞くれえのおっきさで、血液細胞なども含め、自己細胞を増殖するヤツを。その事を話してくれたんは祖父ちゃんだ。そいで、そのナノロボットが入った溶液は、あの、祖母ちゃんのブドウジュースだった。塩っ辛いような血の味がしたんは血液細胞を自己増殖してたからだ。トモキが言うように、
「俺たちが飲んだ祖母ちゃんのジュースは、特殊樹脂と特殊アモルファス金属の合金でできたナノロボットだ。十五年かかって俺たちの脳で増殖して、俺たちが脳波を制御できるようにした」
つけ加えれば、人工知能のナノロボットは、「世直し用にプログラムした」AIナノロボットだ。あたしたちの身体を維持して、あたしたちが世直しするように、あたしたちの能力を増幅してる・・・。
これでいいんだな』
あたしは自己意識領域に現れた意識にそう伝えた。自己意識領域は、意識、思考、精神、心、霊、魂の順に無意識領域へ移行する・・・。この事は大叔父さんの専門だ。あとで訊いてみよう・・・。
『はい、良くできました』
『何だ?!誰だ?誰が出てきたんだ?』
ヒロシが幽霊を見たように慌てだした。
『祖母ちゃんださ。
説明すっから、慌てんな!鯛焼き、落すんじゃねえぞ』
慌てて鯛焼きキッチンカーから客に鯛焼きを渡そうとして、鯛焼きを落しそうになっているヒロシが、店の窓越しに見えた。
『祖母ちゃんと祖父ちゃんは、自分たちの意識を、ナノロボットにアップロードしたんだ。
その事をさっき、教えてもらったんさ。
呼べば、祖母ちゃんも、祖父ちゃんも、答えるぞ!』
『安心したぞ!』
ヒロシがほっと溜息をついている。もちろん意識領域でというより、心で・・・。
『あたしとヒロシとトモキは、共通した能力を与えられたけど、個人的に必要な能力も与えられたみてえだぞ』
『どう言う事だ?』
そう訊きながら、トモキは凄まじい手さばきで鯛焼きを焼いている。トモキはその手際よさに気づいてない。
『トモキが独りで鯛焼きキッチンカーを切り盛りしてた事さ。
並みの奴は独りで商売しても、こんなに急激に商売を大きくできないさ』
当初、トモキの鯛焼きキッチンカーは改造軽トラックだったが、あっという間に2トントラックを改造した現在の鯛焼きキッチンカーに代わった。
近々、4トントラックを改造して鯛焼きキッチンカーにする、とトモキは言ってた。商売上手だけで、こんなに急成長はできねえ。もちろん、トモキは準中型免許を取得済みだ。
トモキ同様、ヒロシも準中型免許を取得済みだ。鯛焼きキッチンカーをトモキ並みに切り盛りできるはずだが、商売気より、食い気が先だって、デブ男になっちまったて訳だ。
『筒抜けだぞ。ヤッちゃん。食い気があっても、これからは変わるさ・・・』
ヒロシが何やら考えてる。その割りに、客をさばく手際良さは変わらない。以前のヒロシはこんなに上手く客をさばけなかった・・・。
『念力が使えるようになり、他の能力も使えるようになったのさ・・・』
大叔父さんはそう伝えながら、今後の事を考え出した。
何を考えてるかって?もちろん、市長の倅の一味を壊滅し、市長が隠蔽した倅の悪事を白日の下に晒す事さ・・・。