あらすじ
現代日本の商社で働いていた鳥辺アリサ(とりべありさ)は、不運にも海外出張中に交通事故死してしまった。ところがいきなり『全能の神ゼー』と名乗る存在によって不思議な白い空間へと呼び出され、『愛と太陽の女神テラ』が司る世界へ転生してくれないかと頼まれる。どうやらその女神は、『英知と月の女神ナル』にコンプレックスを持っており、自分が統括している世界でナルに似た人間を作っては、とことん過酷な運命に置くことで留飲を下げるということを繰り返しているのだという。ゼーはその蛮行を止めようと説得するが、余計に怒り狂ったテラは聞く耳を持たない。全能の神ゼーいわくは、そうしていたずらに人間の運命を操作することによって、神が持つべき力が失われ、太陽の女神テラの世界の維持すら危うくなっているというのだ。どうかテラの目を覚まさせるために、テラの世界で幸せに生きて欲しいと告げてきたゼーに「特別なことはできない」と断るアリサ。ゼーは、『ナルの英知の一部』を授けるから、幸せに暮らすだけで良いと告げた。世界を救うなどという大義などではなく、真面目で正義感の強いアリサらしく天寿を全うすれば良い、と。それぐらいなら、とアリサはついに、転生することを引き受ける。ところが転生した先は、なんと没落寸前のトリベール侯爵家だった。借金まみれで、商売どころか領地すら手放した実家を再興させるため、貴族学院に入学したアリサは、太陽神を崇拝する教会が認定した聖女が学院の同級生であることを知る。闇の魔力を持つアリサは聖女と比較される黒魔女として、周囲に忌み嫌われる役目らしい。しかも男爵令嬢である聖女はどうやら、第一王子の婚約者の地位を狙っているらしく、侯爵令嬢であるアリサを目の敵にしているようだ。第一王子も、侯爵令嬢だからと、なにかとアリサを気に掛ける。だが、アリサはそれどころではない。ナルの英知の一部(闇の権化)である黒蛇のディリティリオと共に、前世の知識を生かして商売をし、侯爵家を再興しようと奮闘する。この王国では、女性が起業することはできない。ならばと協力者を得て男装し、『ヨロズ商会』を立ち上げた。商売を軌道に乗せて借金を返し、没落寸前の家を救う――奔走するアリサはやがて、特権階級の腐敗に頭を悩ませていた次期宰相と噂のロイクと出会う。二十歳の公爵令息であり、宰相補佐官という地位にあるロイクは、情報を扱う『ヨロズ商会』を使って王国に蔓延する薬物の調査に乗り出した。王都の誇る大劇場で定期的に開催される仮面舞踏会で流通しているという情報を掴み、商会長であるアリサに『女装して来い』と無茶な依頼をする。高額報酬につられ、男装商会長であるアリサは、女装をして潜入。さらに深く事件へ関わっていくことになる。男装商会長と宰相補佐官の異色のバディ、陰謀に立ち向かう!そしてアリサは果たして、幸せになれるのか?