あらすじ
洋風文化が広まる大正時代。
今だ洋風に追いつかない秩父の町で、桐島薫子は父と二人で《桐島駄菓子店》をやっていた。
だが近所にできた《ミスミ洋菓子店》に客が取られ倒産目前。
そんなある日、ミスミ洋菓子店が拡大をしたいからと立ち退きを迫られる。
新たな住居は保証し社員としても雇ってくれるという好条件に、父は薫子の嫁ぎ先を探し閉店しても良いかもしれないと揺れる。
しかし諦めきれない薫子は、店を立て直すお菓子を作れる婿を探す決意をして東京へ飛び出していく。
東京に出た薫子は《黒田彩菓茶房》にたどり着く。
黒田彩菓茶房はマスターの黒田誠一という青年が一人で経営する西洋と和が入り混じる店だった。
マスターの作るお菓子には、訪れるお客様一人ひとりの物語が盛り込まれているという。
失敗続きの転職が成功した――そんな人生の積み重ねを綴るミルフィーユ。
眠れない時にラベンダーで安眠を得た――癒しが花咲くラベンダーケーキ。
マスターはあらゆる果物を芸術品に変えた。
林檎の皮は虹の一筋になり、非現実的な青いバタークリームの花で夢や望みが咲き誇る。
美しいお菓子を頬張ると客の顔は輝いた。
薫子はマスターの宝石のような愛情で作られたケーキに魅了され、黒田彩菓茶房で働き始めた。
美しいお菓子とたくさんのお客様の人生に触れ、薫子は自分の人生について考え始める。