あらすじ
どれだけ私が努力をしたところで、かなわなかった。
「さすがですねぇ、セレミラ様は。こんなにも才能にあふれる女性を私は見たことが無い」
頭だけじゃない。容姿にしたって、男性の悦ばせ方にしたって、かなわなかった。
「セレミラ様と話をしているだけで、なんだか心が浄化されていくような感覚がありますなぁ」
「ええ、まったくです。…それに比べて姉のエリーナ様ときたら、なんの特徴もないですなぁ」
「本当に、実はしまいなんて言うのはでたらめなんじゃないですか?」
「それは実に面白い。確かにそれならば納得ですなぁ。はっはっは」
――――
いろいろな大人たちがそんな会話を繰り広げていることを、私は知っていた。だってその通りなのだから、仕方のない事だ。そう自分自身に言い聞かせ、私はずっとずっと我慢をして来た。
しかしそんなある日、ついに私の最愛の人までもがそんな会話をしているのを耳にしてしまった。
「レルト様、エリーナ様とご婚約をするだなんて、あなたも悪いお人ですねぇ。本当の狙いはセレミラ様なのでございましょう?」
「いえいえ、人聞きの悪い事を言わないでくださいな。まぁ否定はしませんけれど(笑)」
――――
ある社交界の場で、そんな会話を繰り広げたのだ。こともあろうか私の婚約者たる身にありながら…
「仕方がないじゃないか…私にも立場と言うものがある。たとえ思ってなどいない事であっても、相手に合わせて言わなければならない事もある。子どもじゃないんだから、それくらいわかるだろう?」
私がレルト様に詰め寄った時、彼が言い放ったのがその言葉。他にもだらだらと言い訳の言葉を連ねていたけれど、そのどれも婚約者に投げる言葉とは思えない内容だった。