あらすじ
「もうリレット様からお話は聞いたかしら?彼はお姉様ではなく、私との婚約を選ばれたわ」
「…ええ、知ってる」
姉の持つものを奪うのがこの上ない快感。以前から持っているその歪んだ性癖は、今もなお解消されてはいないようだ。
「恨まないでくださいよ?最終的に私を選んだのは彼の方なんですから」
さぞ心地が良いのであろう。婚約者というほかならぬ上物を奪えたという喜びが、全く隠せていない。
「別に恨みはしないわ。決まったことだもの」
「くすくす。強がっちゃって。本当は泣きわめきたいくらい悔しいんでしょう?私にはわかるわよ?だって婚約者よ?モノやお金ならまだしも、愛する婚約者の心を実の妹に奪われてしまったのよ?私だったらとても立ち直れないわぁ」
「…」
言わせておけば、好き勝手なことを言ってくれる。しかし的外れな発言を繰り返す彼女の言葉をいちいち訂正してもきりがないため、一旦ここは放っておくことにする。
「リレット様、本当に魅力的な男性ですよねぇ?私がちょっと肩をオフにしたら、すぐにがっついてこられて…それはそれは情熱的なお姿を見せてくれたわぁ」
…なんだか吐き気すら覚える。身内のこういう話ほど耳障りな物はない。
「…それじゃあ私はもう帰るから、彼によろしく」
これ以上はさすがに付き合いきれない。私は彼女の前から姿を消すことにする。
「あら、残念ですね。次にお会いするのは婚約式かしら?とびっきり美しい姿をご覧に入れて差し上げますよ、お、ね、え、さ、ま」
「…」
私は言葉を返さず、その場を立ち去った。