あらすじ
「またソフィスの所へ行かれていたのですか…」
そう言葉をこぼすのは、リキュードの婚約者であるリリア。彼女が憂いているのは、婚約者である自分よりも妹の方を優先する彼の偏愛ぶりにであった。
「仕方がないだろう、彼女の方から誘いがあったんだ。そもそも、妹がかわいくて時間をかけて何が悪いというんだ?婚約相手だから妬いているのか?まるでこどものようだな」
妬いている、というようなかわいいものではなかった。というのも彼は、これまでにも何度もこのような行いを繰り返してきていた。婚約に関する様々な予定を一方的に破棄し、いつも過剰なほどにソフィスを優先していた。
「仕方がない、と言われても…多くの人々があなた様に振り回されている事実をご存じないのですか?」
そう、そんな兄妹に振り回されているのはリリアだけでなく、彼の使用人である者やお屋敷の者の全員なのだった。そんな人々からも怪しい目を向けられるほどに、その行いは行き過ぎていた。
しかしそんな彼女の警告が癇に障ったのか、どこか不機嫌な様子を浮かべながら彼は口を尖らせた。
「…そんなに僕の事が信じられないのなら、もういっそのこと婚約など破棄してしまったっていいんだぞ?よく考えた方が良い。せっかく僕のような男と婚約を果たせたというのに、それをみすみす棒に振ってしまうようなことをするほど君は愚かではないのだろう?だったら僕を信じてついてくる他ないのじゃないのかな?」
あくまで自らが正しいと主張する彼。立場の違いを利用してその力を振りかざす姿は、醜いというほかなかった。しかしこれにリリアは屈しなかった。彼の脅しに真っ向から立ち向かったのだった。
「そうですか、それなら私はそうさせていただきます。後で後悔してももう聞きませんからね?」
まさかそのままの意味で取られるとは思ってもいなかった彼。なんらためらいをもたない彼女の前に、驚きを隠せない。
「お、おいおい…じょ、冗談を本気にされてもつまらないな…」
しかしどんな言葉ももう遅い。決意を固めた彼女はそのまま、文字通り婚約破棄の名のもとに家出したのだった。
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