あらすじ
「ガディウス様はまだお部屋にいらっしゃるのか?」
「はい。どうやらルーフェリナ様を自室に呼び出されて、そのままのようです」
「やれやれ、またか…困ったものだ」
王子の側近たる二人が頭を悩ませるその理由は明白であった。このガディウス王子は、婚約者であるエルナを差し置いて妹であるルーフェリナばかりに気をかけるのだった。エルナは隣国からはるばる婚約に訪れた令嬢であるがゆえに、臣下の人間たちは彼女が気を悪くしないかどうか、毎日のように冷や汗をかいていた。
「…このような事が続けば、いつ隣国から攻め込まれるかもしれません…王子を説得しようにも、応じるとは思えませんし…」
「ひとまず、エルナ様の様子をうかがってみよう…何かあったときには、王子を残してすぐに皆でここを去るのだ。…その結果何が起こったとしても、それはもはや自業自得…我々臣下の者どもの出る幕ではなかったという事だ…」
二人の判断は賢明であった。なぜならこの時すでに、エルナは王子への愛想をつかしてしまっていたのだから。