あらすじ
「フランツ様、以前お話されていたことと違うのでは…以前は確かにこちらを…」
私が努めて冷静に説得を試みるものの、彼の表情には反省のかけらもなかった。
「仕方がないじゃないか。突然にミーナから会いたいと連絡があったんだ。あんなに可愛らしい女性からアプローチを受けて、それに答えないというのは男のすることではないだろう?」
ミーナというのは、この人と付き合いの長い幼馴染の女性である。彼は何をするにも彼女の事を中心に考えていた。
そんな彼女ではなく私と婚約をすることになったのは、自分が婚約した時のミーナの反応を見たかった、ただそれだけだという。私はそのために半ば強引にここへと連れてこられたのだった。
そしてなにか気に入らないことがあれば彼は決まって…
「いやなら出ていけばいいだろう。婚約破棄された女を見る世間の目は厳しいぞ?それに君が耐えられるとは思わないが、やりたいのなら好きにすればいい。今後たとえなんと言われようとも、私のミーナに対する思いは変わらない。ただそれだけの事だ」
と言葉を発する。開き直るとはまさにこのことで、そんな彼を止められるような人物が誰もいないというのも問題だった。