あらすじ

婚約者の立場にあったセレクシアは、複雑な思いを抱えていた。彼女は正真正銘の婚約者なのであったが、相手のジークリットは彼女よりも、妹であるセレアスや幼馴染に当たるエスティアにばかり気をかけていたのだった。しかしそのことを言葉にできるほど彼女は気が強い方ではなく、半ば政略的な要素の強いこの婚約においては彼女の立場は複雑だった。

「婚約者にしてやっているのに、何が不満なんだ?別に何も君に悪い事はしていないだろう?君はただ黙って、僕に言われた通りにしていればいいんだ。それが婚約関係というものだろう?」

 それが彼の決まり文句であり、このやりとりは日常的なものであった。しかし一方で、セレアスやエスティアに対してはその声のトーンが大きく変わる。

「君は本当に可愛らしい…」

「ええ、でも婚約しているんでしょう?そんなこと言われたらセレクシアになんだか申し訳ないわぁ」

「いいんだよ、あんなのはかりそめの婚約関係なんだ。立場上、誰か相手を立てるほかなくなったから、いつでも切り捨てられそうなセレクシアを置いているだけで、特に深い意味はないんだ。そのほうが都合がいいだろう?」

 そう話す彼に、なんらためらいの様子はない。そしてこの側面をセレクシアはすでに知っていた。だからこそ彼女は、ある行動に出たのだった。

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