あらすじ
「エレノーラ! お前との婚約を破棄する!」
王宮の舞踏会で、王子グラシエルは大勢の貴族たちを前にそう宣言した。
婚約者であるエレノーラが、自分の行動に口を出し、愛する女性にまで嫌がらせをしたというのだ。
しかし、エレノーラは泣き叫ぶことも、必死に弁解することもなかった。
「承知いたしました。今までありがとうございました、殿下」
あまりにもあっさりと婚約破棄を受け入れられ、王子は困惑する。
だが、彼は知らなかった。
そもそもこの婚約は、彼の両親が頭を下げて頼み込んだことで成立したものだったのだ。
傲慢で、自分の非を認めず、他人を思いどおりに動かそうとするグラシエル。そんな彼の性格では、まともな結婚相手など見つからない。
困り果てた国王夫妻は、事情を説明したうえでエレノーラに婚約者になってくれるよう頼み、彼女は条件付きでその願いを引き受けていた。
それなのに、グラシエルは三年間支えてくれた婚約者を、自分から追い払ってしまった。
当然、両親は激怒する。
「お前は、我々がどれだけ頭を下げてエレノーラ嬢にお願いしたと思っている!」
ついには王宮から追い出され、王太子としての立場も、周囲からの手厚い待遇も失うグラシエル。
さらに、彼を愛しているはずだった女性まで、彼のもとを去ってしまい――。
自分を支えてくれる人間がいて当然だと思っていた王子は、ようやく自分の行いが招いた結果と向き合うことになる。
一方、ようやく面倒な婚約から解放されたエレノーラは、これからこそ自分の人生を歩もうとするのだった。