あらすじ
「家に、家に帰してください……」
海の底にある伝説の城――竜宮城。
そこへ一人の少女が攫われてきた。
彼女の名は、浦島乙女。
あの浦島太郎の子孫である。
竜宮城の主・海竜王は、かつて妹の乙姫を捨てた浦島太郎を憎んでいた。
乙姫は愛する浦島太郎を地上へ帰した後、二度と会えない悲しみを抱えたまま命を落とした。
その恨みを晴らすため、海竜王は浦島太郎の子孫である乙女を竜宮城へ連れ去ったのだ。
最初は復讐のために攫っただけの少女。
だが、乙女の名が亡き妹・乙姫を思わせることに気づき、海竜王の心は次第に変化していく。
優しく世話を焼き、美しい着物を与え、贅沢な暮らしを用意する。
そしていつしか――乙女を手放したくないという想いを抱くようになっていた。
「乙女、このまま竜宮城に暮らす気はないか」
しかし、乙女には地上に帰って会いたい家族がいる。
そして彼女には、婚約者さえいた。
その事実を知った海竜王は、愛情と執着をあらわにしていく。
「僕と結婚して、悠久を生きてほしい」
海竜王が用意したのは、豪華な宴と――婚礼の席だった。
しかし、互いに抱いた想いは決定的にすれ違っていた。
これは、浦島太郎伝説の裏側で生まれた、海の王と一人の少女の物語。
愛しているからこそ、帰したくない。
竜宮城で始まった二人の恋は、やがて少女を永遠に閉じ込めることになる。