あらすじ
江戸、北町奉行所。与力・秋山新五郎のもとに、奉公人・佐吉から主人への願いが持ち込まれた。訴える者にも、訴えられた者にも、それぞれの言い分がある。町で聞いた証言は書付となり、先例と上役の判断を経て、少しずつ姿を変えていく。早く裁けば見落としが生まれ、慎重を期せば願い出た者を待たせる。北町奉行・松平主膳正のもと、秋山は事実と人情、組織の決まりの間で悩みながら、一枚の書付に向き合う。そこに記せること、記せぬこと。奉行所の判断は、必ずしも誰かを救うとは限らない。それでも、書かなかったことまで、なかったことにはできない。江戸の町を支える役人たちの葛藤を描く、知られざる奉行所の物語。