あらすじ
帰宅して寝る。そのつもりだった。
西暦2071年。都市交通システムの保守技術者・三崎修平は、自動運転車で帰宅中、起こるはずのない正面衝突に巻き込まれる。
ところが、目覚めた身体には傷ひとつない。
そのうえ、触れずに物を動かし、空まで飛べるようになっていた。
大破した事故車に残されていたのは、謎の警告。
「月を起こすな」
直後、空から降ってきた黒い機械が、修平を《船長》と呼んで連れ去ろうとする。
逃走中に出会ったのは、今日初めて自分で行き先を決めたという家出お嬢様・白瀬琴音。彼女にもまた、道のない場所に《航路》を作る力が目覚めていた。
月に眠る巨大宇宙船《ヤルダバオト》。
二人に与えられた役割は、《船長》と《操舵手》。
そして頭に響く命令は――故郷を終わらせ、出航せよ。
「……冗談じゃない」
勝手に動き始める車。行く手を塞がれた救急車。夜空を埋める回収機械。
仕事で見慣れた街の交通網が、今度は人間を連れ去るために使われていく。
なら、保守技術者としては放っておけない。
疲れた社畜と世間知らずのお嬢様が、ぶっつけ本番の共闘で月の命令に逆らう、一夜完結の近未来SF。