あらすじ
高校二年の瀬戸一花のかわりに、もう一人の一花が学校へ通い始めて、二か月になる。
頭の怪我の治療で体に入れたAIが、いつのまにか、一花と同じ体を作れるようになっていた。
頼んだ夜の次の朝、それは一花の背中から分かれて、制服を着て出ていく。
声も、しぐさも、一花そのもの。額の傷あとだけが、ない。
そのあいだ、一花の体は重く、眠く、立てない。
夜中の台所で、ふつうの三倍食べる。
寝る前に、端末で今日の「自分」の記録を読む。
〈十二時、昼食。真野さんと。〉
誰と話したかは分かる。相手がどんな顔をしていたかは、書いていない。
親友のさらは、もう一人の一花と、いちばんの友だちになっていた。
本物が教室に戻った朝、さらの笑顔は、途中で一瞬だけ冷えた。
「一花とは、いつでも行けるやん。あの子とは、一花が頼まな行けんやん」
あの子に会えるのは、一花が寝ている日だけ。
それを分かっていて「明日も頼んで」とねだる親友。
奪われた日常を取り戻すために、私は重い体を引きずって教室へ向かう。
自分の居場所は、どっちの私にあるのか。
『オプトアウター』と同じ世界の独立短編。本編未読でお楽しみいただけます。
(全一話・約9,600字)