あらすじ
ヴィオレットは、ヴェルヌ子爵家に嫁いで二年になる若夫人。
ある朝、夫の妹セリーヌが笑って言った。嫁入りのときに父が持たせてくれた金貨三百枚は、財布ごと、歌劇の人気役者ラファエルへの花束に添えて贈ってしまったと。
金庫の鍵を渡したのは、夫のエルネストだった。
「妹の楽しみくらい、大目に見てやってくれ」
謝られるどころか、使用人の前で義妹に頭を下げさせられたのはヴィオレットのほうだった。
泣き寝入りなんて性に合わない。ヴィオレットは侍女を連れて、劇場の楽屋口へ乗り込む。待っていたのは、花束の山と、思ってもみなかった相手の思ってもみなかった返事だった。
夫のもとへは、もう戻りません。