あらすじ
開式まであと十分。
花婿の代わりに届いたのは、「幼馴染が熱を出したので、式を遅らせてほしい」という伝言だった。
歌劇を観る約束も、結婚指輪を選ぶ日も、私は待ってきた。
彼が謝ってくれるたび、次は一緒に過ごせると思っていた。
けれど今日は、私たちの結婚式だ。
幼馴染の熱は下がり、家族も使用人もそばにいる。それでも彼は、彼女が昼食を取るまで付き添うという。
「セリーヌなら分かってくれる」と言い残して。
私も、心細かった。
この部屋に、来てほしかった。
用意した挨拶の紙を裏返し、私は式の中止を告げる言葉を書き始める。
「少し遅らせれば済むだろう」
そう言って戻ってきた彼に、今度こそ伝えなければならない。
私はもう、あなたと結婚するために待っているのではありません。