あらすじ

舞台の上では、何度でも死ねた。けれど、あなたと出会って初めて、生きていたいと思った。 一九一七年、上海。 京劇の女役として喝采を浴びる柳清音(リウ・チンイン)。 彼が恋に落ちたのは、舞台の上の美しい自分ではなく、化粧を落とした素顔を愛してくれる、無愛想な舞台職人・程懐安(チョン・ホワイアン)だった。 「僕が壊れたら、君が直してくれる?」 「……直せるところは、全部」 戦争と動乱に揺れる時代。 二人が望んだのは、ただ同じ家に帰り、同じ朝を迎えること。 けれど、舞台と違って、人生にはやり直しがない。 ――もしも最後の幕が下りるとき、あなたの手を離さずにいられたなら。 これは、誰かの悲恋を演じ続けた男が、初めて自分自身として愛された物語。 そして、幕が下りたあとに残される、たったひとつの約束の物語。 【時代背景・用語解説】 本作は、1917~1920年の中華民国・上海を舞台にした歴史フィクションです。登場人物や《紅月楼》、恋愛に関する出来事は架空ですが、当時の社会情勢や芸能文化を参考にしています。 ■ 時代背景 - 第一次世界大戦(1914~1918年):中国は1917年に参戦。多くの中国人労働者が欧州へ渡りました。 - 五四運動(1919年):北京の学生運動をきっかけに、上海でも抗議活動やストライキが広がりました。 ■ 用語解説 - 京劇(ジンジュ):歌・台詞・舞踊・武術を組み合わせた中国の伝統演劇。 - 旦(ダン):京劇における女性役の総称。当時は男性が女性役を演じることも一般的でした。 - 青衣(チンイー):旦の一種。気品ある女性などを演じ、歌唱を重視する役柄。 - 虞姫(ユージー):楚の武将・項羽に寄り添った女性。悲劇的な別れの物語で知られます。 - 肺癆(フェイラオ):肺結核のこと。当時は有効な抗結核薬がなく、命に関わる病でした。 ※作中の虞姫の舞台は古くから伝わる物語を題材とした創作的な描写です。現在知られる京劇《覇王別姫》の成立は1922年とされ、本作の時代とは異なります。

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小説を読もう2026/10/15
  • 現在の作品紅月楼に、幕は下りない。