あらすじ
婚約記念の肖像画で、婚約者の付き添いになるつもりはありません。
ドレスを誂え、髪型を吟味し、鏡の前で姿勢まで練習した私。
それなのに、下絵で目を奪われるのは、隣に立つルーベン様のお顔ばかり。
これほど準備した私が、顔を持って来ただけの男に負けてよいはずがない。
せめて絵の中では少しおとなしくしていただこうと、地味な上着を選び、髪型も変えてみたのだけれど。
飾りを減らせば姿のよさが際立ち、前髪を下ろせば目を逸らせない。
しかも本人は、私に見つめられて嬉しそうにしている。
「私と並ぶのは、嫌?」
違います。むしろ、そのお顔が腹立たしいほど好きなのです。
人に自慢したいくらい。でも、ほかの方にはあまり見ないでほしい。
美しすぎる婚約者に張り合う私と、私に褒められたい婚約者。
一枚の肖像画をめぐる攻防は、どうにも思いどおりに進みません。