あらすじ
三浦圭吾とは十五年来の付き合いで、恋人同士になってから七年になる。
花守中央総合病院の同僚たちは、私たちが今月結婚式を挙げる予定だったことを知っている。そして、圭吾にやけに懐いている若い女医、小野寺莉奈のことも。
莉奈をめぐって、私たちは何度も喧嘩した。そのたびに折れるのは私で、温かいスープを持って圭吾に会いに行けば、いつの間にか仲直りしたことになっていた。
「美月さん、誤解しないでくださいね。圭吾先輩とは、ちょっと仲がいいだけですから」
医局の休憩室で、莉奈は圭吾の白衣を羽織り、彼の肩にもたれて笑っていた。
圭吾は彼女のためにみかんを剥き、白い筋まで丁寧に取り除いている。
結婚式まで、あと十日。
それなのに圭吾は、莉奈との賭けに乗って、式を一か月延期すると一方的に言い出した。
私はバッグからマンションの鍵を取り出し、テーブルに置いた。
圭吾はまだ知らない。
数時間前、私は久世彰人と市役所に婚姻届を提出していた。
久世彰人は、同じ病院の脳神経外科医。
圭吾が昔から、何かにつけて張り合っている相手だった。