あらすじ
文久三年(一八六二年)、十四歳で元服したばかりの実良《さねよし》は、薩摩藩士として薩英戦争に参戦した。迫りくる英国艦隊――黒船に対し、薩摩は必死に戦った。初陣の実良も懸命に砲弾を運んだ。だが薩摩の先込め式の加農《カノン》砲では、英国の元込め式の長距離射程の自在砲――アームストロング砲にかなわず、実良は苦い思いを味わった。
四年後、慶応二年(一八六六年)十月、京都の薩摩藩邸にて、英国式兵学者・赤松小三郎が招聘されたことを聞き、実良は上洛して教えを乞う。
小三郎から英国式兵学だけでなく、心がまえも学び、充実した実良の京都生活は、小三郎の暗殺により、突如断たれてしまう。
そして――明治三十九年(一九〇六年)五月、前年の日露戦争の戦没者慰霊祭のため善光寺を訪ねた実良は、そのあと、小三郎の郷里であり墓のある上田に立ち寄り、恩師の墓参をおこなった。