あらすじ
誰もが、彼女にだけ話してしまう。
十八世紀半ば、山間の修道院に「健康上の配慮」でやってきた若い修道女セレスト。青白い肌、重い瞼、胸に手を当てる仕草。誰もが病弱で無害な娘だと思った。
だが彼女は、聴き、赦し、そして負債を負わせる。出会う者を、少しずつ借財者に変えていく。
露骨な暴力も、直接的な脅迫もない。
ただ、告解室の格子の向こうで、人は次々と口を開く。
修道院を、村を、やがて王国の耳を掌握していく女を、四十年間その傍らにいた見習い修道女は、扉の陰から見続けた。
これは、その手記である。