あらすじ
仕事も、婚約者も、居場所も失った。――それでも、私にはまだ、できることがあった。
料理研究家・水瀬千晴は、ある日突然、盗作疑惑で炎上する。
身に覚えのない疑惑。責任を押しつける会社。そして、自分の店を守るために彼女との婚約を手放した恋人。
すべてを失いかけた千晴の前に現れたのは、海辺のホテル《汐風館》の総支配人・黒瀬冬馬だった。
「料理を作る人は、足りてます」
「厨房を立て直せる人なら欲しい」
人気の朝食を提供しながら、なぜか赤字が続く古いホテル。
そこには、料理を守ろうとする頑固な料理長、朝早くから懸命に働くスタッフ、そして数字だけでは測れない仕事の価値があった。
料理の才能では、誰かに敵わないかもしれない。
けれど、百人分の朝食を百人に届ける方法なら、考えられる。
仕入れを見直し、厨房の働き方を変え、少しずつ仲間との信頼を築いていく千晴。
そんな彼女を、冬馬は決して無条件に慰めない。ただ、彼女が目の前で積み重ねた仕事を、きちんと見ていた。
やがて明らかになる炎上の真相。かつての恋人との再会。そして、千晴が自分の意思で選ぶ、新しい仕事と恋。
これは、誰かの名前の陰に隠れていた女性が、自分の仕事と、自分の帰る場所を見つける物語。
海辺のホテルで始まる、お仕事再生と大人の恋愛を描いたヒューマンドラマ。