あらすじ
「外国人ばかり優遇するな。日本人の税金だぞ。嫌なら出ていけ」
――そう書き込んでいた俺が、異世界では外国人になった。
高橋和彦、53歳。独身、結婚歴なし。ネットでは国の未来を憂い、職場では周囲に煙たがられていた。本人としては正論を言っているだけだ。聞かされる側の都合までは、考えたことがない。
異世界へ来ても若返らず、膝は痛いし、腹も出ている。剣の才能はなく、授かった力は、荷物に触れると重さや、中身が腐ったり壊れたりしていないかが分かるというもの。敵を倒すどころか、倉庫の仕事に役立ちそうな能力だった。
食堂の女主人に拾われ、荷運びで食いつなぎ始めた和彦は、届く物資に妙な食い違いを見つける。役人の説明は信用ならない。外国の商人も怪しい。そうやって疑い始めると、誰も彼も敵に見えてくる。
「俺が言ったとおりだろ」と言いたい。自分を馬鹿にした連中を見返したい。ところが、ネットなら相手を罵倒して画面を閉じれば済んだが、ここではそうはいかない。怒鳴った相手とは翌日も顔を合わせるし、思い込みで誰かに迷惑をかければ、自分で謝り、後始末をしなければならない。
外国人の世話になり、他人の飯を食いながら、今日も国のあり方に口を出す。それでも、危ないと思ったことを黙って見過ごせるほど、素直な性格でもなかった。
53歳、独身、口は最悪。
今度の「国を守れ」は、俺もやる。