あらすじ
十八歳の誕生日。私はケーキのろうそくを吹き消した。
会場の照明が戻った途端、私を囲んでいた友人たちが悲鳴を上げた。真帆は口元を押さえ、後ずさりした拍子に壁へぶつかった。それでも私から目を離せず、震える指でこちらを指さしている。
「いやああっ! 死体よ! 顔が腐ってる!」
私は自分の頬に触れた。肌は滑らかで、化粧も崩れていない。淡いピンクのマニキュアを塗った指も、白いドレスも、さっきまでと変わらなかった。
それなのに、友人たちには私が腐り果てた死体に見えているらしい。
前世の私は、周囲の人間から化け物扱いされ、火葬場で生きたまま焼き殺された。
そして今、十八歳の誕生日に戻ってきた。
震える手で祖母に電話をかけると、懐かしい声が返ってきた。祖母は優しく私をなだめ、家に帰れば厄を払ってあげると言った。私の好きなおはぎも用意してあるらしい。
私は上着を取りに戻る余裕もなく、ホテルを飛び出した。
晩秋の街を裸足で走り、ようやく御影家の屋敷にたどり着く。玄関の扉に手をかけたとき、奥から祖母の声が聞こえてきた。
「玄道さんの言うとおりね。千景が死んだと思わせれば、あの子の命を直哉に移せるそうよ。帰ってきたら、あの水を飲ませましょう」
車椅子に座った弟が、弾んだ声で尋ねた。
「ばあちゃん、これで僕は死なずに済むんだよね?」
「もちろんよ。十八年も育てた甲斐があったわ。最後くらい、弟のために役立ってもらわなくちゃね」
私は玄関の前で動けなくなった。
誕生日会で起きたことは、偶然ではなかった。
家族は、私が死ぬのを待っていたのだ。
けれど、彼らは知らない。
私は一度、彼らに殺されている。
今度は黙って命を差し出すつもりはなかった。