あらすじ
「エレノア。お前が身を引けば、全て丸く収まるんだ」
婚約者も家督も、病弱な妹に譲ってほしいそうです。 領地の帳簿をつけ、支払いの期限を延ばしてもらうために頭を下げるのは、ずっと私の仕事でしたけれど。
「承知いたしました」
指輪を返し、その夜、小さな鞄ひとつで家を出ました。
辿り着いた港町で欲しかったのは、寝床と、自分の食い扶持を稼ぐ仕事。 ところが、倒れかけた私を助けてくださった領主様は、どうにも放っておいてくれません。
「いいから食え。お前が一番に食っていい」
差し出されたのは、温かいスープと焼き魚のサンドイッチ。 帳簿の数字なら合わせられるのに、こういう親切には、何と答えたらいいのでしょう。