あらすじ
※タイトルは「ABCTほういもう」と読みます。
AB【Academic Background】
──それは、Society6.0時代に教育省が導入した「学力(偏差値)」を正式に数値化した指標。
ABが高ければ、権力も名誉も未来も手に入る。就職も、結婚も、ローン審査すら有利になる。逆にABが低ければ、どれほど技術や努力があっても“無いもの”として扱われ、社会の底へ落ちていく。
教育省が掲げた目的は二つ。
一つ、学力低下を防ぎ、知識を身につけさせること。
二つ、旧時代の非効率な学習と無秩序を根絶すること。
かつての社会は、主観的な評価や感情的な対立で揺れていた。才能も努力も「誰が認めるか」で価値が変わり、不毛な争いが絶えなかった。だから教育省は断言した。それは“人間の本能的欠陥”と定め、ABという数値によって公平を作り、社会を最適化する──それが唯一の正解だと。
だが現実は違った。AB社会は、努力よりも「地頭」や「裕福さ」が勝つ世界になり、学びはいつしか“ブランドのための競技”へ変わっていった。「公平であるはずの社会」が、最大の不平等を生み出していた。
そして、この理不尽に抗う者はなかった……はずだったのだが。