あらすじ

ある晴れた春の朝。セレスティアは目を開けた。目に映るのは見慣れた天井。 …十七歳。天命鑑定の日。 セレスティアは今日、勇者に選ばれる。 そして何年か後、世界は滅びる。 全部知っている。 魔王を倒した。国を救った。神を殺した。仲間を変え、道を変え、助ける順番を変えて百二回。 すべて駄目だった。 だから今回は誰も連れていかない。 期待せず、頼らず、好きにもならない。 失うくらいなら最初から一人で。 そう決めて支度を始めた時、ふと一人の顔が浮かんだ。 朝弱くて、いつも寝ぐせ頭で、今日みたいな大事な日にも絶対に寝坊する。 一昨日は腹が立って芋を投げつけた。起こしに行くのは少し気まずい。 起こしに行く? だれ? 生まれて十七年間。ずっと一緒にいた記憶がある。 川で魚を捕った。森で迷った。 家の窓を割って、二人で逃げた。 …なのに。 百二回分の記憶のどこを探しても見当たらない。 セレスティアは家を出て広場に向かう途中、道端から小さな石を拾った。 気づけば、見たことのない、よく行く家の前に立っていた。 二階。左の窓。 石を投げる。 ・・・返事はない。 もう一つ。 「……馬鹿」 やがて村の広場にひどい寝ぐせの少年が走ってくる。 見慣れた見覚えのない顔。 百二回、一度も見たことのない少年。 初めてのいつものような言葉を交わし、少年は天命鑑定を受ける。 剣術適性、中。 魔術適性、低。 神聖加護、なし。 そして。 「天命適性……記載なし?」 そんな人間を、セレスティアは知らない。 百二回。一人も。 少年が戻ってくる。 「どうした?」 「……何でもない」 「顔やばいぞ」 「何でもない」 「腹痛い?」 「違う」 違う。 この少年を知っている。 十七年間、一緒にいた。 それなのに。 百二回の世界には、一度もいなかった。 セレスティアは震える指を握りしめる。 「あなた」 少年が首を傾げた。 「本当にレオン?」

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小説を読もう2026/09/28
  • 現在の作品幼馴染が100周目過ぎる。