あらすじ
中世のような幻想世界で、魔王サンリューは三千年に及ぶ圧政の末、勇者たちによって討ち倒された。
城は崩れ落ちた。
軍勢は塵となった。
そして、その名さえも忘れられた記憶となった。
――だが、彼は死ななかった。
千年後。
サンリューは、自分のいないまま歩み続けた世界で目を覚ます。
人間たちは勝利した。
かつて「闇の大地」と呼ばれていた土地は分割され、新たな名を与えられた。
あの戦争で名を轟かせた勇者たちは、すでに死んだか、あるいは歴史の彼方へと姿を消している。
もう、取り戻すべき玉座はない。
晴らすべき復讐もない。
だが、目を覚ました彼を待っていたのは、自らの敗北以上に不可解なものだった。
――感情が戻っていた。
空腹。
寒さ。
痛み。
疲労。
泣くこと。
笑うこと。
恐れること。
何かを望むこと。
それは、何千年もの間、力によって奪われていたものだった。
本来ならば、彼を滅ぼすはずだった敗北。
――それこそが、彼を再び生へと引き戻したのだ。
今や、軍もない。
国もない。
そして、生きる目的さえない。
かつて天を震わせた魔王にとって、それはあまりにも突拍子もない選択だった。
それでも、サンリューは決めた。
魔王として生きることができないのなら――
冒険者として、生きてみよう。
だが、過去が消えたわけではない。
かつての戦場には、今も遺跡が残っている。
伝説は、今も人々の心に恐怖として刻まれている。
そして――
この世界のどこかで。
今もなお、彼の存在を知る「何か」がいる。