あらすじ
地方の市役所で働く三十五歳の佐伯美紀は、変化のない日々と「何もない」故郷に閉塞感を抱いていた。ある日、三番ホームで拾ったスケッチブックをきっかけに、東京から来た青年画家・涼と出会う。彼の絵を通して、美紀は古びた駅や商店街にも、人々の記憶や美しさが息づいていることに気づく。折しも駅前では再開発が進み、思い出の写真館などが失われようとしていた。美紀は住民とともに写真や記録を集め、残せるものを未来へつなぐ活動を始める。その過程で涼との距離も深まり、美紀は町も自分自身も、失うのではなく変化しながら受け継いでいけると知る。やがて彼女の日常には、新しい季節へ踏み出す光が差し始める。