あらすじ
十歳で両親を亡くしてから、ライアスは村外れの家と小さな畑で暮らしてきた。
畑で作物を育て、必要なら村の人に助けてもらう。
贅沢をしなければ、食うことには困らない。
だが、塩も服も道具も畑からは採れない。
両親が残してくれた金も、十七歳になった頃にはいよいよ底が見えてきた。
なら、自分で稼ぐしかない。
ライアスは家と畑を残し、仕事を探すために町へ向かう。
そこで初めて受けた鑑定で告げられた特性は、《聴力強化》。
人より少し遠くの音が聞こえる。
小さな音にも気づきやすい。
どうやら、それだけらしい。
町で知った冒険者の仕事も、思っていたものとは少し違った。
倉庫掃除。
荷運び。
採取。
見張り。
店の手伝い。
剣を振るうような仕事ばかりではなく、誰かが困っていることを片づける仕事も多い。
特別強いわけでもない。
戦いが得意なわけでもない。
《聴力強化》だって、何に使えるのかまだよく分からない。
それでも働けば金になる。
金があれば宿に泊まれる。
飯も食える。
そうして地味な仕事を一つずつこなすうちに、《聴力強化》も少しずつ使い道を見せ始める。
まずは働く。
そして今日の飯を食う。
ライアスの生活は、そんなところから少しずつ変わり始める。