あらすじ
吉原の夜は、美しい。
朱の暖簾、揺れる提灯、豪奢な着物。
白粉をまとい、紅を引いた遊女たちは、男たちに夢を見せる。
けれど――その華やかな世界には、格子の内側から決して出られない女たちがいた。
幼い頃、家族のために吉原へ売られた小夜も、その一人だった。
借金。
年季。
身請け。
そして、女の価値を金に換える帳面。
小夜は生き残るために、美しくなることを覚えた。
嫌な男にも笑い、悲しくても笑い、自分の心を隠すことを覚えた。
そんなある日、小夜の前に、自分と同じように吉原へ売られてきた少女が現れる。
「姉さん。私、いつになったら外に出られるの?」
その問いに、小夜は答えることができなかった。
自分自身でさえ、答えを知らなかったからだ。
やがて小夜は、女たちを縛っている帳簿の中に、ある秘密を見つける。
そして知る。
自分たちを閉じ込めているのは、ひとりの悪人ではない。
金。
貧しさ。
家族。
欲望。
嫉妬。
そして、人間が作り上げた「仕組み」そのものなのだと。
美しい花が咲き誇る吉原で、
女たちは今日も笑う。
誰かの夢になるために。
けれど小夜は、最後に紅を落とす。
その赤は、花びらの色なのか。
それとも――血の色なのか。
これは、夢を売る女たちが、自分自身の人生を取り戻そうとする物語。