あらすじ
屋敷町の外れ、曲がりくねった石畳の先に、客の来ない骨董屋がある。
店の名は「時雨堂」。入口には錆びたトタン板に『冷やかしお断り』の筆文字。店主の久世玄一郎は、品物の値打ちを材質でも年代でもなく、そこに宿る"魂"――持ち主の想いの残り香で決める変わり者だ。口を開けば毒舌、迷い込んだ客は三十秒で逃げ帰る。そのくせ「幽霊など存在しない」と言い切るこの男のもとで、女子高生・五十嵐椿は今日もアルバイトに励んでいる。時給は、店主の気分次第でシシャモからコオロギまで。
そんな時雨堂に、ときおり"いわくつき"の品が持ち込まれる。
主を失っても手放せなかった物。果たされなかった約束。行き場をなくした想いは念となって品に残り、ときに人の影さえ狂わせる。
念を読む骨董屋と、それを感じ取ってしまう女子高生。常に白い手袋を外さない店主の、その理由を知る者はいない。
いわくつき、承ります。
持ち主の想いの行き先を探す、現代怪異譚。
■第一譚「黄昏の猫」