あらすじ
世界の地形を変えた「大災害」から二十数年。人々の生活は石炭と重油の時代に戻っていた。社会を再編する超国家的ネットワークのもと、世界リーグ=WBLは野球と賭博を管理することで統治の一端を担っている。
学生リーグで活躍したボックは、仕組まれた暴力事件のせいでWBLへ進めなかった。悩んだ末、ボックは素性を隠して「代打屋」になった。数打席、数試合単位の契約で各地を渡り歩く放浪生活。心を擦り減らしたボックは、野球を辞めることを決める。そして最後の仕事のつもりで、草の根球団が集まる独立リーグ=IBLのチーム、ガストンズと契約した。
賭けの対象にもなっているIBLの野球は、興行的な側面も強い。中でもガストンズは別格だった。速球でイノシシを倒し、ピッチングマシンを登板させ、観客を守備につかせる。彼らの破天荒な野球に、ボックは大いに戸惑う。
ガストンズの本拠地は、木材生産で栄える地方都市セキだった。労働者と商売人が住むこの街は、いつも賑やかで熱気に満ちている。巨大な木造の屋根をもつセキドーム球場は、街のシンボルだった。
その球場で、ボックは全身を炎に包まれたファイヤーバード=FBと出会う。人の言葉を話すFBは、街で買い物し、祭りに現れ、時にはチームを助ける。妖怪とも神ともつかない火の鳥を、セキの人々は静かに受け入れていた。
熱狂を呼び起こすガストンズの面々、逞しく堂々と生きる街の人々、子どものように自由なFB。野球しかできない自分に悩みつつも、彼らとの交流を通じてボックは誰かと共に生きる感覚を少しずつ取り戻していく。