あらすじ
捨てたくても捨てられないものというのは、実に厄介な存在である。
単に部屋のスペースを圧迫するだけでなく、その存在がじわじわと心まで圧迫してくるのだ。目に入るたびに忘れていた過去を呼び覚ましたり、捨てられない理由を意識させたりして、ストレスを感じさせてくる。
たとえば、先輩から格安で譲ってもらったギター、友人からのプレゼント、祖父の形見である茶色く変色した扇子。あるいは元カノに別れ際に手渡された手紙。どれも今となっては使うこともなく、必要になるときが来る見込みもない。それでも、いざゴミ袋に放り込もうとすると、胸の奥がちくりと痛む。また、どこかで再会したときに『そういえばあれどうなった?』などと聞かれる場面を想像すると、ぐっと息を呑み、静かに元の場所へ戻してしまうのだ。