あらすじ
「魔力を持たぬ無能など、王族には必要ない」
魔力測定で一切の反応を示さなかった第九王子ルシオンは、国王アルフォンスと第一王子レオンハルトによって王位継承権を奪われ、王宮から追放された。
だが、当の本人は魔法が使えないものの前向きだった。
面倒な王族のしがらみから解放されたルシオンは、双子の護衛リゼットとミネットを連れ、人里離れた土地で気ままに暮らすことを決める。
そこが、強力な魔物が跋扈し、誰も近寄ろうとしない『魔境』とも知らずに――
一方、公爵令嬢ヴィオレッタもまた、すべてを失おうとしていた。
学院では悪役令嬢と恐れられているものの、その悪評のほとんどは彼女の行動に尾ひれを加え悪意により歪められたもの。
やがて身に覚えのない悪行を理由にレオンハルトから婚約を破棄され、最愛の妹への虐待まで疑われたヴィオレッタは、両親からも見放され公爵家を勘当されてしまう。
誰にも信じてもらえず、強気だった心もついに折れてしまった。
すべてを終わらせようと魔境の森へ入ったヴィオレッタ。
そこで彼女が見つけたのは――
「……何をなさっているのですか、ルシオン殿下?」
「もう、殿下じゃないよ。見れば分かるだろ。家を作ってる」
国を追放されたはずの元第九王子だった。
行く場所がないなら、ここにいればいい。
ルシオンの何気ない一言から、捨てられた二人の新しい生活が始まる。
まだ二人は知らない。
ルシオンが「魔力を持たない」のではなく、既存の魔法とはまったく異なる力を宿していること。
雨が降ってほしいと願えば、空に雨雲が生まれる。
水が欲しいと願えば、大地から泉が湧く。
そして二人が静かに暮らしていた小さな居場所には、やがて行き場を失った人々が集まり始め――
これは、国に捨てられた第九王子と、悪女に仕立て上げられた公爵令嬢が、誰も近寄らない魔境を自分たちの居場所へ変えていく物語。
二人を捨てた者たち?
知りません。
こちらはこちらで幸せになりますので――どうぞ、勝手にざまぁされていてください。