あらすじ
月が二つに分かたれた世界。山奥の閉鎖的な月水(つきみず)村で、胡詠(こよみ)は周囲の望む「聞き分けの良い、神聖な月巫女」の仮面を被り、嘘を吐き続けて生きてきた。
それが波風を立てない術だと割り切っていたが、本当は嘘をつきたくなかった。
心に毒を溜め込むような日々に限界を迎えた彼女は、自由を求め、裸足のまま村を飛び出す。
満身創痍で倒れた胡詠を救ったのは、あやかし討伐の旅をする稲穂色の髪の青年・志那斗(しなと)だった。
外の世界を知らない胡詠は、裏切られることに怯えながらも志那斗に縋り、彼は困惑しつつも彼女を優しく保護してくれた。
一人の女の子として扱われ、初めて得た温もりに救われる一方で、誰にでも平等に優しい彼の姿に「私だけを特別扱いしてほしい」という歪な独占欲が芽生えだす。
同時に「嘘を吐き続けてきた醜い自分が、本音を伝えても愛されるはずがない」という激しい自己嫌悪と不安に苛まれるようになっていた。葛藤を抱きながらたどり着いた街で、胡詠は――。