あらすじ
佐藤陽斗には、二人の幼馴染がいる。
進藤龍馬。頭脳明晰、運動神経抜群、常に学年首位。二条彩音。才色兼備、学年二位。龍馬にだけは負けたくないと燃えている。二人はいつも一緒にいて、周囲からは「付き合っているよね」と囁かれている。
陽斗は、その輪の外にいる。かつては神童と呼ばれ、二人に勉強を教えていた。だが高校入学と同時に両親が離婚し、やる気を失い、成績は中位まで転落した。母は別の人と暮らし始め、それでも週末だけは家に戻ってくる。姉は母の会社で働き、父はその会社に復職した。複雑な家庭の中で、陽斗は男女の関係そのものに疑いを持つようになり、恋愛への関心を失っていた。
知らないのは、陽斗だけだった。
彩音が想っているのは、龍馬ではない。小学生の頃、「結婚しよう」と誓い合った、陽斗だった。龍馬は、その彩音に振り向いてもらうために、勉強も運動も努力してきた。陽斗が転落した後、ようやく追い越した。
物語は、高校入学後の中間テストから始まる。順位表に並ぶ三人の名前。見える序列と、見えない心の位置。高校三年間と大学編を通して、陽斗は少しずつ「人間はなぜ誰かを想い、なぜ離れるのか」と問い始める。両親の離婚の真相、母が会社を立ち上げた経緯、そして三人の間にある約束。
これは、恋を忘れた少年が、もう一度誰かを想うまでの、遠回りの物語。