あらすじ
錬金薬師になって、世界中の美味しいものを食べて回りたい。
魔法学園三年生のフェイは、放課後の薬草園でひとり回復薬を作り続けている。教科書に載っていない技法を独学で試す毎日。付き合ってくれるのは、この畑に百五十年住み着いている小うるさい精霊のコロンだけだ。
ある日、学園を六百年守ってきた結界に、わずかな乱れが観測される。
原因は誰にも分からない。
けれどフェイは、いつも調合で感じている手触りを思い出す。混ざらない素材を無理に混ぜたときの、あの嫌な感じ。よく似ていると思った。
薬草園の古い女神像の前で、彼は初めて手を合わせた。
その祈りが、遠い場所の何かに届いてしまったことを、まだ誰も知らない。
――祈りとは、乞うことではない。
忘れられた盟約と、名前を持たない精霊たちと、うまく手を取り合えなくなった人と精霊の物語。
派手な戦いはあまり出てきません。代わりに、薬草を揉む手つきと、誰にも見られていない者のことを書きました。