あらすじ

船は、夜のうちに沈んだ。 乗っていたのは四十一人。 助かったのは、十五歳の少年ひとりだけだった。 けれど少年は、自分の「名前」だけを失っていた。 死を待つ彼の前に現れた光は告げる。 「あなたは勇者候補に選出されました」 勇者候補となったことで命をつないだ少年は、流れ着いた村で「マリン」と呼ばれ、暮らし始める。 そして半年後。 光は再び現れ、魔王討伐の旅へ出るよう促した。 マリンの答えは、ただ一言。 「行かない」 彼が欲しいのは、世界を救ったという称号ではない。 失われた、自分自身の名前だった。 けれど旅には出ない。 水を汲み、薪を割り、パンを焼き、村で暮らす。 訪れる旅人たちに、ただ一つの問いを投げかけながら。 「名前って、要るか」 そうして二十五年が過ぎていく。 これは、用意された「勇者の物語」から降りた一人の男と、 物語に書かれた役割の、その外側で生きる者たちの話。 そして最後まで読んだとき、 あなたが読んでいた「物語」の意味は、少しだけ変わる。

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カクヨム2026/09/26
  • 現在の作品沈んだ船