あらすじ
王太子妃候補として五年間、王都の慈善施療院を視察してきた公爵令嬢ヘレナ。
いつしか彼女の仕事は、王都十二施療院の薬草需要をまとめ、薬師組合や修道院薬園と調整し、不足時の割当を決めるところまで増えていた。
そんな中、王家の外交方針が変わり、王太子アドリアンとの婚約は円満に解消される。
ヘレナはそれを受け入れ、一か月かけて業務を引き継ぐ。
「来月から、私の承認印は使えません」
ところが引継ぎ後、南区で熱病が流行。
必要な薬草は、王都全体で見れば足りている。
問題は、必要な場所へ届かないことだった。
薬はある。担当者も仕事をしている。
それでも届かない。
五年間、ヘレナがその場でつないできた調整だけが、正式な手順になっていなかった。