あらすじ
応亀二年。徳野国の四方五方塚、その地下には「黄泉」と呼ばれる広大な霊窟魔所が広がっている。
かつて黄泉から魑魅魍魎が地上へ現れた際、富士嶽から招かれた験者・三之坊は、黄泉そのものを鎮めることはできなかったものの、怪異が出入りする裂け目を見つけ、結界によって封じた。以来、その地には三之坊神社が建てられ、三之坊の一族が地鎮を担ってきた。
しかし、三之坊が黄泉の悪しき神と契約したのではないかという疑いは、密かに語り継がれていた。
時を経た現在。三之坊神社の修験士・碧は、相棒の典とともに日々の修行に励んでいた。ある日、二人は神主であり碧の師でもある睦之坊から、隠れ殿にいる三之坊のもとへ呼び出される。
三之坊から告げられた任務は、黄泉へ降り、その奥で起きている異変の原因を探ることだった。
碧と典は、玲、毬とともに黄泉へ入る。そこは単なる地下空間ではなく、現世と異界の境目に広がり、姿を絶えず変える不可思議な世界だった。
道中、久延毘古や久延毘売、巨大な蛙の神、森の神など、数々の神々と出会いながら、四人は黄泉の奥へ進んでいく。そして大きな屋敷を治める猿田比売と出会い、そこで一つの問題を知らされる。
天照姫と月読姫が対立し、それぞれが軍勢を集めていたのだ。
神々同士の争いには神々自身の事情があり、他の神が容易に介入することもできない。そこで猿田比売は、異なる世界から来た人間である碧と典に、二柱の仲裁を依頼する。
二人はまず月読姫、続いて天照姫のもとを訪れ、それぞれの言葉を聞く。やがて碧は、この争いが互いを嫌っているからではなく、離れている間に生じた行き違いによるものだと見抜く。
碧と典は二柱を直接向き合わせ、互いの軍勢を解散させることで争いを終わらせる。
一方、猿田比売の屋敷では、玲と毬も神々との交流を続けていた。毬は宇迦之魂日女との勝負に勝利し、その縁から彼女と親しくなる。
こうして任務を終えた四人は三之坊神社へ帰還する。そこには、二柱の大いなる神から力を受けた典と、新たに毬と行動を共にする宇迦之魂日女の姿もあった。
黄泉へ向かった四人の旅は、単なる異変の調査にとどまらず、人と神、神と神との関係を巡る出来事へと広がっていく。そしてその背後には、今なお三之坊と黄泉をめぐる古い謎が残されている。